《Episode 5 すれ違い》 最終話
唯愛「私は裏切られた、ねぇ、そうでしょ!?そうだよね!?最後まで待ってたとしてもダメだったんでしょ!?ねぇ!!!」
優華「違う…違うの!!!ねぇ唯愛!!!!確かに私たちはひどいことをした…それは本当にごめん…けど、最後の会話は…
あれは違うの!!!!本当はあの時…唯愛と距離を置いて、唯愛の状況を変えようとしてたの…
そうすれば、私たちがまた当たろうとしても、唯愛と距離をおいてるんだから、できるはずがない…
だから、あそこまでひどいことを言えば…きっと離れて行ってくれるって…
被害はもうないって思ってた…わかってくれるって思ってた!!!だから!!!!!…だから、ああ言ったの…」
唯愛「…じ、じゃあ…すべて私の勘違い…だったの…?」
亮「どうやら、そのようだな。僕たちは君にあたってしまっていることを、変えようとしていた。
嫌だったからな。仲間を傷つけるのは。」
唯愛「…よかったぁ」
香奈恵「…え?」
唯愛「本当に皆、優しいよね…。ありがとう!これでもうすべてわかったよ…」
静「おい唯愛、お前なに言ってんだ…」
唯愛「だって、私の勘違いだったんでしょ?本当によかったぁ!やっぱり皆は私の大好きな皆なんだよ!!
…ごめんね。勘違いでいじめ返して…本当にごめん…
これで今度こそ、幸せになれるね」
咲「ねぇ唯愛ちゃん…何してるの…ねぇやめてよ…ねぇ!!!!」
唯愛「このクリスマスの木での出来事、すんごく楽しかったよ!!!!また皆で仲良くできて…」
雄弥「おい唯愛!!お前何してるんだよ!!」
晴「おい…唯愛…!!!!馬鹿なことはやめなさい!また…また僕を置いて行くのか…!?」
唯愛「ごめんね、晴…でも、私はいなくならなきゃ。勘違いで人を傷つけたり恨んだり…そんなことあっちゃダメなんだよ
だから、私は消えなきゃ。晴。あなたと過ごした時間は、とっても楽しかったよ。ごめんね。ねぇ優華」
優華「唯愛…お願い…いかないで…ねぇいかないでよ!!!!!!」
唯愛「優華、ありがとね。今まで何度も助けられて…お世話になりました。皆、ありがとう!!!…またね」
優華「ねぇ…そんなこと言わないで…唯愛!!!!いかないでよ…誤解が解けたなら…それでいいじゃん…なんでまた行っちゃうの?ねぇ唯愛!!!!!」
唯愛「…サヨナラ」
晴「唯愛ぁぁぁああああああああ!!!!!!!」
優華N「唯愛はクリスマスの木の枝で自分の胸を貫くと、そこから少しずつ、光となって消えて行った」
晴「唯愛…唯愛…!!!!!」
静「くそ…またか…」
亮「…フラッシュバックした気分だな…」
咲「ねぇ…嘘でしょ?嘘だよねぇ…?唯愛…?」
香奈恵「…咲ちゃん…もう遅いの…何もかも…」
優華「信じない…信じない…唯愛…なんで行っちゃったのさ…ねぇ…唯愛…」
静「今更言ったって…もう無駄なんだろ」
亮「その通りだ。静」
雄弥「俺ら…また…失ったのか…」
香奈恵「ふ…ふふふふ…」
咲「香奈恵…ちゃん…?」
香奈恵「あは…あっはははははははははははは!!!!」
雄弥「お…おい、香奈恵…?どうしたんだよ…」
香奈恵「ざ、ざまぁみろよ…!これが報いってやつよ!!!ざまぁみろ!!!!私をいじめ返すからこうなったんだよ。
最後までまんまと騙されやがって!」
優華「ちょっと…香奈恵、いったいどういう意味…」
香奈恵「そのまんま!私はあの時からずっと唯愛を恨んでた!いつか消えてもらおうと思ってたのよ!思ってたよりも遅くなっちゃったけどね」
優華「…だから…ちゃんとした理由を言えって言ってるのよ!!!!」
香奈恵「私はね、晴が取られたことに対して、本当に恨んでいたのよ。あなたたちに命令してたのだって、
すべて晴のため…晴があんな女なんかにとられて堪るものですか」
雄弥「俺らまでも利用してたっていうのか…?」
香奈恵「その通りよ。すべては私と晴が結ばれるため」
優華「…香奈恵…サイテーだよ…私の親友を…私をよくも騙して…!!!!」
咲「か…香奈恵ちゃん…嘘だよね…?嘘だって言ってよ…ねぇ!!」
晴「おい…今の話は本当か…?」
優華N「晴の声は今まで聞いたことがないくらい低く、怒りと恨みがこもっていた
それは普段怒らない温厚な晴の面影はほぼ残っていなかった」
香奈恵「そうだよ、晴。私ね、あなたと小さい頃からずっと一緒だったじゃない?
小さい頃からあなただけを見て…」
晴「ちげぇよ。そんなことは聞いてねぇ。お前が皆をだまして唯愛をいじめてたのか?
先生にはあんないい顔するのによ…」
香奈恵「そうだけど…でもそれは全部晴からあの女を…」
晴「口答えするなぁ!」
香奈恵「!!!!!…は…晴…?」
晴「じゃあなんだよ…お前が…お前のせいで唯愛は死んだのかよ…今!!ここで!!!!
自分たちが辛いからって人を…唯愛を傷つけていい
理由にはならねぇんだよ…。僕がどれだけ我慢してきたことか!!!!唯愛を失ったあの日からずっと!!!ずっと仇を打ちたかった!
けど…皆が唯愛を失ってショックを受けているって知っていたから我慢してきた!!!!けど…勘違いで死んでいった唯愛に対して
なんで勘違いでもなく自分の傷を和らげるためにしたお前らが今ここに存在してるんだよ…
おかしいだろ…唯愛は…お前のせいで…お前らのせいで…死んでいったんだ…2度も!!!!!お前たち…殺してやるよ…
自分の罪をわからせてやる…!!!!!!!!」
優華「それを私たちにぶつけたって意味ないでしょ!?」
晴「お前ら全員実行したんだろうが!!!!!!」
咲「おちついて晴!!!!あんたが唯愛を強く思うのはわかるけど…」
晴「黙れぇぇ!!!!!!お前らに何がわかる!!!彼女を…愛する人を目の前で失った悲しみが…お前らなんかにわかってたまるかよ!!!!」
優華「私だって!!!!!…私だって今目の前で親友を失ったんだ…」
晴「でも唯愛を殺したのは…!!!!!お前らだ!!!!!!」
優華N「晴は唯愛が使ったクリスマスの木の枝を手にし、それをこちらに向けて振り上げた」
雄弥「お、おお、落ち着けよ!!!晴!!!!」
亮「完全に冷静さを欠いているな」
静「お前が冷静すぎるんだ!!!殺されるかもしれないんだぞ!!!!」
咲「きゃぁ!!!!!」
香奈恵「咲!!!!!ねぇ晴!!!目を覚まして!!!!」
晴「うらぁぁぁぁぁ!!!!」
静「あっぶね…!!!!」
雄弥「マジで死ぬってこれ!!!!!晴!!!!戻ってこいよ!!!!!!!」
香奈恵「咲!!!隠れるよ!!!」
咲「う…うん」
晴「逃がすかよ…!!!!!」
香奈恵「うっ!!!!!!」
咲「香奈恵ちゃん!!!!!」
晴「なんでお前らが存在してて、唯愛が消えなきゃいけないんだ!!!!誰よりも辛かったのは唯愛だったんだぞ!!!
母親一つ腕で育てられて、弟妹のために、家事しながら学校通って!!!成績だってあまりよくなくて、先生に怒られて…
クラスでも委員会でも目をつけられて!!!!!!頼れるのはお前らだけだったのに!!!!!」
香奈恵「だって…私にとってはあの女は私からあなたの全てを取り上げた女よ?あんな小娘に…とられるなんて…」
晴「お前は俺から唯愛の全てを取り上げたんだぞ!!!!そんなこと言う資格なんてねぇよ!!!!」
雄弥「だ、だったら俺ら関係…」
静「この馬鹿っ!関係ねぇわけねぇだろ!!!さっきも言ってたけど俺らは実行しちまったんだ!!騙されていたとはいえ実行犯なんだよ!!!!」
亮「静の言うとおりだ。俺らは実行してしまった。それはどうにも動かせない事実である限り、晴の怒りは収まらないだろうな」
咲「で…でも…私たちも一応被害者…」
優華「そういう問題じゃない。咲ちゃん…」
晴「ごちゃごちゃうるせぇよ…!!!!」
優華「晴!!!うるさいのはどっち!?ちゃんと冷静になって!
そんなことをして唯愛が報われると思ってるの!?それを本当に唯愛が望んでるの!?
そんな風に思ってるんだったら唯愛のこと本当に思ってないのはあんたの方だよ!!!
唯愛は最期の最期まで私たちを信じてた!それを今あんたは壊そうとしてるんだよ!?
唯愛の彼氏なんだったら…もっと唯愛の気持ち考えてやりなさいよ!!!!!
私ができなかったこと!親友に向けてやってしまった私よりあんたの方が唯愛のこと
解れるんじゃないの!?確かに私たちは加害者だよ!いじめた!けど、恨みを恨みで返したって
なんも変わらないってこと、唯愛に聞いてたんじゃなかったの!?」
晴「ぐっ…」
香奈恵「…優華…あんた、寒いよ。寒い!!!!寒い寒い寒い!!!!!」
咲「香奈恵!!!!!」
香奈恵「だってそうじゃん?わかってる?わかってない?わかるわけないじゃん。わかってたら
いじめるわけないもんねぇ?そうだよねぇ??ねぇ?少なくとも私はわかりたくもない」
晴「香奈…お前…!!!!」
優華「あんたにはわかんないだろうね!!!!大切な人が目の前でいなくなる辛さが!!!!自分の手で
大切な人を失う辛さが!!!香奈恵…あんた、お母さん危なかったんだよね。なんとも思わなかったわけ?」
香奈恵「思うわけないじゃん。私が大切に思ってるのは晴だけだから」
ばちん!!!!!
香奈恵「…え?」
咲「優華ちゃん!!!」
雄弥「優華…お前っ!!!!」
亮「また大胆な行動に出たな」
静「だからそんな淡々というなよ…」
優華「馬鹿じゃないの…あんた。…今まであんたに服従してきた自分がバカみたいだ。捨て駒みたいに扱って…」
香奈恵「いった…そうよ!!!!だったらなに??なんなの??私が悪いの?すべてあの女のせいでしょ?私なにも悪くない」
静「あんたは…外道か!!!!」
香奈恵「戯言なら勝手にどーぞ。私には知ったこっちゃない。晴さえいてくれれば、ね」
晴「…そーかよ。じゃあ…俺は…」
亮「おい晴。なにをしている」
晴「見てわかんない?唯愛のところに行く準備だよ」
咲「な…なにを言って…」
香奈恵「ねぇ晴…嘘だよね?私を置いてあの女のところにいくなんて…」
晴「嘘じゃねーよ。じゃあな。皆…」
咲「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
静「晴!!!!!!」
優華N「晴は自分の胸にクリスマスの木を突き立てた。…唯愛と同じように」
香奈恵「嘘…嘘でしょ…晴が…晴…うぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
優華N「香奈恵は今、大切な人を失う意味を知ったみたいだった。
クリスマスの幻影の世界は、晴と唯愛がいなくなったから、役割を果たしたかのように消えて行った。
私たちは今、あの海岸に立っていた」
香奈恵「晴…ごめん…ごめんなさい…」
咲「香奈恵ちゃん…」
香奈恵「…!…咲…皆…ごめん…私本当にサイテーだね…」
優華「…香奈恵、確かにあんたは最低なことしたよ。でも、もうこれからはしないでしょ?」
亮「なるほど、そういうことか」
雄弥「…優華、そいつ、許すつもり?」
優華「雄弥…あんたは唯愛と晴からなにも感じ取れなかったわけ?」
静「恨みは恨みで返してもろくなことにならないってことだろ」
雄弥「あぁ…ね」
香奈恵「う…うぅ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
優華N「私たちのクリスマスは幕を閉じた。周りは皆クリスマスで浮かれていたけれど、
私たちは一向に明るくなんてなれなかった。
私たちはもう忘れることはないだろう。私たちが犯した罪の重さと、二人のこと。そして
恨みなんてするもんじゃないことを」
~1年後の裏の公園にて~
優華「唯愛。あの世では元気に暮らしていますか?っていうのもなんか変か…
ごめんね、助けてあげられなくて…。私たちは今も元気です。
香奈恵はあれからすっかり落ち込んじゃってるけど、もう誰かを傷つけることは
しないと思うよ。大丈夫。私が見張っとくから。…晴とあの世で幸せに、ね」
亮「優華、もう来ていたのか」
優華「亮…。早いね」
亮「1時間前集合が当たり前だろう」
優華「それは早すぎ」
雄弥「あ、亮に優華!もう来てたのか」
亮「雄弥、めずらしいな。お前が早く来るなんて」
雄弥「いやぁ…その…なんていうか…気分?的なやつだよ」
静「さすがのお前でもそういうのわかるんだな」
雄弥「うるせーよ!!!」
咲「皆お待たせ。早いね…」
香奈恵「…待たせて、ごめん…」
優華「大丈夫だよ皆今来たところだから」
雄弥「じゃ、お墓参りということで!」
静「なんでお前が音頭とるんだよ。つかそんな空気じゃねーよ」
雄弥「いいじゃんか~ケチ~」
咲「はやくしなさいよ…」
香奈恵「…黙とうっ!!!」
優華M「唯愛、晴、今年もがんばるよ。だから…今度こそ、私たちを見守ってて」
優華「ありがとう…私の親友…」
*END*